私が金の積立を真剣に検討し始めたのは、銀行を辞めてフリーランスになってからのことでした。
銀行員時代、窓口でお客さまの資産運用の相談を受けていたとき、「現金だけで持っていると目減りする」という話を何度もしていました。でも正直に言うと、当時の自分の資産はほぼ預金だけ。人にはアドバイスしていたのに、自分のことは後回しにしていたんです。
退職してFPの勉強を始めてから、改めて「守りの資産」について考えるようになりました。株式投資はすでにやっていたけれど、株だけだとどうしても値動きに振り回されます。2020年のコロナショックでは保有銘柄が一時30%以上下がって、夜中にスマホで株価を確認する日々が続きました。あのときに痛感したのが、「値動きの方向が違う資産を持っておくべきだ」ということ。
インフレや円安に強い実物資産を持っておきたい。そう思って調べ始めたのが純金積立です。
2026年に入ってからも金価格は高い水準で推移しています。1月には国内の店頭小売価格が1グラムあたり3万円を超えました。ゴールドマン・サックスは2026年末までに1オンス5,400ドル、JPモルガンは6,300ドルまでの上昇を予想しているという報道もあります。世界的な地政学リスクや各国の中央銀行による金の買い増しが、価格を押し上げている構図です。
「今から始めても遅いかな」と一瞬思いましたが、積立の基本は長期。10年、20年のスパンで考えるなら、目先の高値・安値にこだわっても仕方ありません。始めどきを考えすぎると、いつまでも始められない。それは銀行の窓口でお客さまにも言っていたことでした。
目次
主な純金積立サービスを調べてみた
まず手をつけたのが、主要な純金積立サービスの比較です。ネットで調べると名前が出てくるのは、大きく分けて3つのタイプでした。
ネット証券系(SBI証券・楽天証券)
いちばん手軽に始められるのがネット証券です。
SBI証券は月1,000円から積立ができて、買付手数料も業界最低水準。すでにSBI証券の口座を持っている人なら、追加の手続きもほとんどなく始められます。
楽天証券は楽天カードで決済できるのが面白い。買付手数料は1.65%(税込)ですが、積立額の0.5%分が楽天ポイントとして戻ってきます。楽天経済圏を使っている人には相性がいいサービスです。
どちらも年会費無料、売却手数料無料。コスト面ではかなり優秀です。スマホのアプリからサクッと積立設定ができて、あとは放っておけばいい。忙しい人にはこの手軽さが最大の魅力だと思います。
ただ、あくまでネット完結型なので、「金のことをじっくり相談したい」というニーズには応えにくい印象でした。チャットサポートはありますが、金投資の知識がある担当者に腰を据えて話を聞いてもらえるかというと、そこは期待しないほうがいい。
貴金属専門大手(田中貴金属)
歴史と実績で選ぶなら田中貴金属。月3,000円から始められて、積み立てた金はドルコスト平均法で自動購入されます。
手数料は月額の積立金額に応じて1.6%〜2.8%(税込)。ネット証券と比べるとやや高めですが、全国に直営店舗があって対面で相談できるのは安心感があります。一定量まで積み立てれば金の延べ棒やジュエリーとして受け取れるのも、貴金属メーカーならでは。
年会費は1,100円(税込)で、ネット申込なら無料。知名度も高く、純金積立と言えば田中貴金属を思い浮かべる人も多いはずです。
調べてみて感じた「一長一短」
いくつかのサービスを見比べて思ったのは、どれも一長一短があるということ。
ネット証券はコストが安くて手軽だけど、サポートは薄い。田中貴金属は信頼感があるけど、手数料はネット証券より高い。「安さ」と「安心感」のどちらを優先するかで、選択肢が変わってきます。
全国銀行協会のサイトでも純金積立の仕組みが解説されていますが、そこにも書かれているとおり、手数料体系や最低購入額は業者ごとにかなり違います。比較せずに始めると後悔しやすいポイントです。
そんな中、もうひとつ気になるサービスが見つかりました。
比較の中でゴールドリンクが目に留まった
ネット証券と貴金属大手を調べている途中で知ったのが、株式会社ゴールドリンクの「ゴールド積立くん」というサービスです。
2010年設立で、東京・大阪・仙台・名古屋に拠点を持つ貴金属販売会社。正直、最初は名前を聞いたことがなかったのですが、調べていくうちに「他のサービスとはちょっと仕組みが違うな」と感じるポイントがいくつかありました。
「確定型」という珍しい仕組み
いちばん目を引いたのが、「確定型純金積立」という仕組みです。
一般的な純金積立は、毎月一定額を積み立てて、その時々の金価格で金を買っていきます。いわゆるドルコスト平均法。価格が下がったときに多く買えるメリットがある反面、最終的にいくらで金が手に入るかは積立が終わるまでわかりません。
ゴールドリンクの場合は逆の発想です。契約時に金の購入価格を確定させて、その金額を分割して月々支払っていく。途中で金価格が上がっても下がっても、支払い総額は変わりません。ローンではないので金利も発生しない。
たとえば、契約時に1グラム15,000円で100グラム分を契約したとします。支払い総額は150万円+諸費用で確定。その後、金価格が1グラム20,000円に上がっても、支払い額は変わりません。逆に12,000円に下がっても、すでに確定した価格で購入することになります。
この仕組みは人によって評価が分かれるところだと思います。「金価格が下がったときに安く買えるチャンスを逃す」という見方もできるし、「いくら払えばいいのか最初にわかる」という安心感もある。どちらが正解ということではなく、投資に対する考え方次第です。
私が気になったのは、「総額がわかっている」という点でした。銀行員をしていたとき、「結局いくらかかるんですか」という質問は本当に多かった。投資に慣れていない人にとって、先の見えない支出は不安の種になります。確定型はそういう不安を減らせる設計だと感じました。
専任担当者がつくサポート体制
もうひとつ印象的だったのが、担当者によるサポート体制です。
ネット証券は基本的にセルフサービス。田中貴金属は店舗で相談できますが、予約が必要だったり、近くに店舗がなかったりすることもあります。
ゴールドリンクは契約者に専任の担当者がついて、ライフプランに合わせた積立プランを一緒に考えてくれるとのこと。金投資がまったく初めてという人にとっては、こういうサポートがあるのは心強いはずです。
もちろん、「営業されるのでは」と心配になる気持ちもわかります。私もその点は少し気になりました。ただ、相談できる相手がいること自体は、特に初心者にとって大きなメリットだと思います。
取扱い商品の幅広さ
ゴールドリンクでは金だけでなく、プラチナ、銀、パラジウム、さらに金貨の積立まで対応しています。
- ゴールド積立くん
- プラチナ積立くん
- シルバー積立くん
- パラジウム積立くん
- コイン積立くん
ネット証券でも金・プラチナ・銀あたりは扱っていますが、パラジウムや金貨まで積立できるところはあまり見かけません。貴金属投資の選択肢を広く持ちたい人には面白いラインナップです。
各サービスの特徴をざっくり比較
ここまで調べた内容を、テーブルにまとめてみました。
| SBI証券 | 楽天証券 | 田中貴金属 | ゴールドリンク | |
|---|---|---|---|---|
| 最低積立額 | 月1,000円〜 | 月1,000円〜 | 月3,000円〜 | 月3,000円〜 |
| 買付手数料 | 業界最低水準 | 1.65%(税込) | 1.6〜2.8%(税込) | 購入代金の10%+税(初回一括) |
| 年会費 | 無料 | 無料 | 1,100円(ネット無料) | 30,000円(税込) |
| 購入方式 | ドルコスト平均法 | ドルコスト平均法 | ドルコスト平均法 | 確定型(契約時に価格確定) |
| サポート | ネット完結 | ネット完結 | 店舗+ネット | 専任担当者 |
| 取扱い種類 | 金・プラチナ・銀 | 金・プラチナ・銀 | 金・プラチナ・銀 | 金・プラチナ・銀・パラジウム・金貨 |
こうして並べてみると、コスト重視ならネット証券、バランス型なら田中貴金属、仕組みやサポートに独自色があるのがゴールドリンク。そんな整理になります。
ゴールドリンクの年間管理費30,000円は正直高いなと感じました。ただ、「専任担当者のサポート込み」と考えれば、人によっては妥当と感じるかもしれません。コストの感じ方は、何をサービスに求めるかで変わります。
それと、表を見比べていて改めて思ったのが、購入方式の違いが意外と大きいということ。ドルコスト平均法は「価格が読めないからこそ、機械的に買い続ける」という考え方。確定型は「最初に全体像を決めてしまう」という考え方。同じ純金積立でもアプローチがまるで違います。どっちが優れているという話ではなく、自分の性格との相性で選ぶのがいいと思います。
SNSでの発信も見てみた
サービス内容を調べた後、会社の雰囲気も知りたくなってSNSをチェックしてみました。
金に関する豆知識や市場動向についての投稿がされていて、企業として情報発信に力を入れている様子が伝わります。企業のSNSは更新が途絶えているところも多い中、定期的に発信を続けているのは好印象でした。気になる方は株式会社ゴールドリンクのInstagramをのぞいてみてください。
ただし、投資関連の情報をSNSだけで判断するのはおすすめしません。日本金地金流通協会のような業界団体のサイトや、金融庁の注意喚起なども合わせてチェックしておくと安心です。複数の情報源を持つことが、失敗を防ぐいちばんの方法だと思います。
純金積立を始める前に確認しておきたいこと
ここまでいくつかのサービスを比較してきましたが、どのサービスを選ぶにしても、事前に確認しておきたいポイントがあります。
手数料の全体像を把握する
純金積立の手数料は、買付時の手数料だけではありません。年会費、口座管理費、売却時の手数料、現物で受け取る場合の送料や加工費。トータルで考える必要があります。
たとえば、月5,000円を10年間積み立てるとしましょう。元本は60万円。買付手数料が1.65%なら年間990円、10年で約1万円。一方、年会費が30,000円のサービスなら10年で30万円。同じ「手数料」でも、積み方やサービス内容によって総コストはまったく変わってきます。
買付手数料が安くても年会費が高いケース、逆に年会費無料でも買付手数料が割高なケース。「月にいくら積み立てて、何年続けるか」をシミュレーションしてみると、実質コストの違いが見えてきます。電卓を叩いて一度計算してみることを強くおすすめします。
自分の投資スタイルとの相性
これがいちばん大事かもしれません。
- 自分で調べて判断できるタイプ → ネット証券のセルフサービスで十分
- 相談しながら進めたいタイプ → 対面サポートがあるサービス向き
- 金額を確定させて計画的に進めたいタイプ → ゴールドリンクの確定型が合う可能性あり
- コストを最小限に抑えたいタイプ → ネット証券一択
投資スタイルに正解はないので、自分がストレスなく続けられる方法を選ぶのがいちばんです。積立は継続してこそ意味がある。途中でやめたくなるようなサービスでは本末転倒です。
もうひとつ付け加えると、「最初に選んだサービスをずっと使い続けなければいけない」という思い込みも捨てたほうがいい。まず一つ試してみて、合わなければ乗り換えればいいだけの話です。完璧なサービスを探し続けるより、まず始めてみることのほうがずっと大事だと、FPの勉強をしていて強く感じています。
私がこれから検討していること
正直に言うと、まだどのサービスにするか決めていません。
ネット証券の手軽さとコストの安さは魅力的だし、ゴールドリンクの確定型という考え方も面白い。田中貴金属のブランド力と実績も捨てがたい。それぞれにちゃんと強みがあるから迷うわけで、これは贅沢な悩みなのかもしれません。
今の段階で考えているのは、まずネット証券で少額の積立を始めつつ、ゴールドリンクについてはもう少し詳しく話を聞いてみたいということです。確定型の仕組みは実際に担当者から説明を受けないと、メリット・デメリットが肌感覚でわかりにくい部分もあります。公式サイトの情報だけでは判断しきれないことって、やはりあります。
金投資を始めるにあたって私が決めているのは、「生活防衛資金には手をつけない」ということ。これはFPとしても鉄則です。どんなに魅力的なサービスでも、余裕資金の範囲で始めなければ続けられません。毎月の積立額を無理に大きくして、途中で資金が苦しくなってやめてしまうのがいちばんもったいない。
金の価格は短期的には上下しますが、長期で見れば資産防衛の選択肢として有力なのは間違いありません。大事なのは、自分に合ったやり方で無理なく続けること。
銀行員時代に窓口で何百回も言っていた「投資は長期・分散・積立」。あのとき他人に伝えていたことを、ようやく自分自身で実践しようとしています。
